You are here

撫子さんの知り合いに聞き込みをする。

Character: 
categoryStory: 

パーティーの会場選びには、料理の好みが影響する場合が多い。その点については、撫子さんとより付き合いが長い人の方がより詳しいだろう。だったら、行く場所は一つしかないーー
「バイクカレッジ一飜」。以前撫子さんの面接の予行練習のため連れて来られた、思い出の場所。いきなり教習を受けろって言われたけど、今思うとあれは初めてのデートだったよな。
ここも最初はごく普通の教習所だと思ってたけど、後になって、撫子さんは子供の頃からよくここに来ていて、しかも彼女のお父さんもここで働いてると知った。
このことを教えてくれたのは、あの時知り合ったベテラン教官さんだ。撫子さんのことを子供の頃から見てきた彼なら、何か知っているかもしれない。
だが、そう上手くは行かないのが世の常。
[ベテラン教官]撫子ちゃんの好みねぇ……。いや、バイクとか、ヘルメットならなんとなくわかるんだけど、パーティーや料理のことっていうとちょっとなあ……。
[player]そうですか……。
ベテラン教官さんに今日来た理由を説明すると、このような返答をくれた。
[ベテラン教官]ああそうだ、食いもんの好みってことなら、撫子ちゃんの親父に聞けばいいんじゃねえか? 今日はこっちに来てるぞ。
[player]え……!?
[ベテラン教官]ほら、案内してやるよ。あんたが撫子ちゃんに信頼されて、頼られてるってことはみんな知ってるし、いきなり親に会っても問題ねえだろ?
そうか、問題ないか……。いや問題しかないが?? 緊張を胸に、修理工房に連れて行ってもらった。
[撫子の父]……。
目の前の男性は、髪こそ真っ白だが山のような体格をしていて、無言で私のことをじっと見ている。
[player]こ、こんにちは、PLAYERと申します……。
[撫子の父]……。
[player]えっと……。
[撫子の父]……あんただったのか。
[player]待ってください!! まず話を聞いてください!!
待って待って、レンチを持ったままずんずんこっちに来ないでー!
[撫子の父]おっと、すまん。やっと思い出した、この前撫子のやつと一緒に夕日を見に行ったの、あんただったよな! ハッハッハ!
あ、今の無言タイムはただ思い出せなかっただけ?
[player]あ、はい……。
ほんの少しか言葉を交わしてはいないけど、撫子さんのあの「クールさの中に秘めた情熱」は親譲りのものだったんだ……とはっきりわかった。
そして、撫子さんのお父さんに事情を説明すると……。
[撫子の父]ほう、バースデーサプライズか。あのバカ正直な娘は、そういうロマンチックなもんとか、誰かから優しくされるとかいうもんには一生無縁なんじゃねえかと思ってたわ。まぁ、その性格のおかげで俺は助かったんだがね……。
[撫子の父]でもあんたがいりゃ、そういうつまらない心配もしなくて済むだろうよ。
年上の男性は、飾らない言葉で包み隠さず話してくれているが、それを聞いた私は何とも言えない複雑な気持ちになった。
[player]そこはぜひ、任せてください。
目が合うと、お互いの言いたいことが分かった気がした。大男の目に残っていた最後の迷いが散っていき、ハハハと笑って私の質問に答えてくれた。
[撫子の父]さて、撫子の誕生日だが。実はあいつがガキの頃、俺は仕事と育児を両立するために、毎日街中を連れ回しててな……。なかなか誕生日を祝うチャンスなんて無かったんだ。
[撫子の父]このままじゃだめだって俺も思ってた。それで、ある年誕生日の時にやつにどこか行きたい所はあるかって聞いたんだ。やつは何って言ったと思う?「どっかに行ってもいいけど、親父は気にしなくていい。こちとら毎日仕事に付き合ってんだ、誕生日くらい一人で自由にさせてくれ。」ってよ。十代の娘が言う言葉か?
[player]親にこういうこと言える子供って、親のことを信頼出来る友人のように思っているって聞いたことがあります。それで……彼女はその年、どこに行ったんですか?
[撫子の父]ここだ。
[player]え、ここですか?
[撫子の父]そうだ、この修理工房だった。好きにさせろと言いながら、結局あれからも毎年ここで俺と、そしてバイクと一緒に誕生日を過ごしてきた。
[player]そうだったんですか。撫子さんはバイクが好きですし、自分の意思でここにいるんだってことを言いたかったんじゃないでしょうか。
[撫子の父]ハハハッ! お前さん、あいつのことよく分かってるじゃねぇか。そういうこった、俺も何年もかかってようやく気づいたんだがね。あいつにとってバイクより大事な物はない。自分の誕生日よりもだ。
[player]でも今回は、撫子さんの方からパーティーをやろうと言い出したんです。流石にここで飲み食いはしないと思いますが……。
[撫子の父]そうだなあ……あ、そうだ。一度だけ例外があったな。
[撫子の父]高校行ってた頃、一度だけ学校の友達と人気のレストランで誕生日を祝って貰ってたな。たった一度きりだったからよく覚えてるよ。……そういえばこの前、「あそこは今でも印象に残ってるんだよね」ってメッセージが入ってたような。今回も、あんたらをそこに連れて行くつもりなんじゃねえか?
最近話題に出してたレストラン……? これは有力情報だ。撫子さんのお父さんにチャット履歴を見せてもらい、すぐマップでそのレストランの住所を検索してみた。一飜市内にある、サービスの良さと、「カワイイ」をコンセプトにしている人気レストランだ。
[撫子の父]若い奴はこういうの好きそうだよな。ほら、あんたも見てばかりいないで、実際にそこへ確認してみたらどうだ。あいつの名前で予約が入ってるかもしれないぞ。
[player]は、はい!
答えに近づいたという手応えがありつつも、何か引っかかる所のあった私は教習所から出て、さっきメモしておいた三つのルートを取り出した。
これからレストランに直行するか、それともひとまず別のルートから調査を続けるか……。