[???] 「空中庭園」ディナーパーティー、入場券配布中! 今すぐちょちょいとウチの会館の会員登録をすれば、抽選に参加出来ますよ~……
[player] すごく聞き覚えのある声だなあ……
[-] 声が聞こえる方向を頼りに角を曲がっていくと、福姫さんがメガホン片手に精力的に呼び込みをしていた。
[福姫] さらにさらに! 「福寿双全館」の場代割引券も、どどーんとご用意してますよー!
[player] どうすれば、抽選に参加できるの?
[福姫] わ、PLAYERさん!?
[-] こっちを向いた福姫は、私の姿に驚いたようで、ほっと胸を撫で下ろした。
[福姫] ふふん、あんさんの場合、「福寿双全館」の常連さんやからなぁ……
[-] 福姫さんは小声で耳打ちした。
[福姫] あんさんとウチの仲で、抽選なんて水臭いやないですか。店じまいしたら一枚あげますさかい。
[player] そんな……いいの?
[福姫] もちろんや。言うたやろ? 福寿双全館とのご縁を大事にしてくれたら、ウチの福運が寄り添うって。ほら、ご利益あったやろ?
[-] 二時間後
[-] 果たして、福姫は約束を守り、出店を閉める際に「空中庭園」ディナーパーティーの入場券一枚をくれた。ところが……
[player] ここで二時間もの間、ここの抽選に付き添ってたけど、全員「福寿双全館」の場代割引券を当ててたよね。まさか……抽選箱の中に、ディナーパーティーの入場券なんてものは入ってなかったのでは……?
[福姫] なんや、最近の若者はほんまに疑うのが好きやなぁ。運ってものに絶対はありません、百回引いてもはずれる人がいれば、一発で当たる人もいます。
[player] それ、気持ちのいい言葉じゃないな……撤回して欲しいかも……
[福姫] ふふん、それに、ウチらは長年誠実さをウリにして商いしてきたんや。信じられないなら、ウチの扇子に聞いてみたらどうや?
[player] ……信じるよ。
[福姫] そらよかったわ。今夜は楽しんでってやー。
[-] 福姫はテキパキと片づけをし、くるりと身を翻すとそそくさと行ってしまった。焦りすら感じられる後ろ姿だったな……。でもまあ、入場券も手に入れられたことだし、今夜の花火には期待するとしよう。「空中庭園は絶好の花火鑑賞スポット!」と公式CatChatでも紹介されてたし。そのせいでこの入場券が入手困難になってるわけだけど……。
[-] 日没後
[-] 空中庭園に着くと、既に多くの人が集まっていた。私は知り合い……斎藤さんとジニアさんの姿を見つけ、彼らの元に向かった。
[player] 二人とも、こんばんは。
[ジニア] PLAYERさん、ごきげんよう。
[斎藤治] ああ、こんばんは。
[斎藤治] ちょうど、ジニア嬢に遊園地の感想を伺っていたところでな。良ければ、あなたの意見も聞かせてくれないか。
[player] いいですよ。
[斎藤治] 園内のアトラクションの中で、二人にとって印象深かったものは?
[player] 私は……うーん、ここはスリル満点のアトラクションがいっぱいあって、一番となるとすぐには選べませんね……ジニアさんは?
[ジニア] それはもちろん、ジェ……ジェ……
[player] ジェ?
[ジニア] ジェ……全然、乗ったことも無かったアトラクションかしら! 具体的にと言われると、わたくしもすぐには申し上げられませんわね。
[斎藤治] ふむ、実に意外な回答だ。どうやら、遊園地には改良の余地がまだ充分にありそうだな。
[秘書] お話し中の所、失礼します。
[秘書] 社長とお話ししたいというお客様がお見えです。
[斎藤治] わかった、すぐ行く。
[斎藤治] 先に失礼する、二人ともごゆっくり。
[ジニア] ……ふぅ。
[-] 斎藤さんが立ち去ると、ジニアさんはホッとため息をつき、見るからに表情が和らいだ。
[player] 緊張してたみたいですね。
[ジニア] ええ。斎藤さんとわたくしの一族は、仕事上のお付き合いがありまして……わたくしがジェットコースターに乗ったことを、危うく知られてしまうところでしたわ。
[player] ジェットコースターに乗ったことを知られたら、何かまずいことでも?
[ジニア] わたくしがジェットコースターに乗って、大声で叫んだ……なんて知られたら、わたくしの一族に対する印象が変わってしまうかもしれませんもの。
[player] ジニアさんは、世間の目なんて気にしない人だと思ってました。
[ジニア] そうは言いましても、レディのたしなみというものは、世間の目に対応するためだけのものではないでしょう?
[player] ジニアさんは、どこか思い悩んでいるかのように首を傾げた。
[ジニア] 今日、ジェットコースターで大声を上げた時、少々はしたないことをしてしまったと思いましたわ……ですが、自分を抑えきれませんでしたの。お恥ずかしい限りですわ。
[player] ジェットコースターに乗ってる時は、みんな自分の緊張を和らげるのに必死で、誰も隣の人のことなんて気にしてないものですよ。だから大丈夫です。
[ジニア] ……本当ですか?
[player] えぇ。
[ジニア] ふぅ……それなら安心ですわ……あら? あちらの方、どうして人だかりが?
[-] ジニアの視線の先を追うと、階下の広場にたくさんの人が集まっているのが見えた。
[player] みんな、花火大会を見に来た人みたいですね。空中庭園のキャパには限りがありますし、入場券を持ってない人は、広場で見ることにしたんでしょう。
[player] というか、広場で花火を見る方が、ごく一般的な市民の生活らしいと思います。
[ジニア] 庶民の生活、ですか……
[player] PLAYERさん、広場で花火を見る感覚を味わってみたいのですけれど、一緒に来てくださいませんこと?
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