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店員に助けを求める

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[-] さっき見たことだけでは、強盗だとは断定できないけど……「飲茶 竹雲」にはこれだけ多くの客が来ているのだから、きっと他にも目撃者がいるはずだ。まずはここの店員に話してみよう。
[-] 私は階段を駆け下り、先ほど私を案内してくれた店員を見つけ、二階に連れていき、開け放たれた窓に向かって背を押した……
[店員] ……You jump,I jump?
[-] 店員は弱々しく両腕を広げた。
[player] ……向かいの競売場の二階を見てください!!!
[店員] えっ……
[-] 店員は頭を出してさっと外を見ると、体を引っ込めて訳がわからないといった様子で私を見た。
[店員] 見ましたよ、昨日と全く同じ景色です。
[player] 仮面の人がいなくなってる……?
[-] 私は彼を窓から引き剥がし、改めて外を見た……がらんとした競売場の中には、仮面の人物もあの女性もおらず、開け放たれた窓以外何も変わった様子はない。
[player] 競売場が……どうして? いや、きっと他にも見た人がいるはずだ!
[店員] 当店の一階からですと大通りしか見えず、二階からでないと競売場は見えないんですよ。しかし、さっき二階にいたのはあなただけです。なので……
[店員] 何があったかわかりませんが、落ち着いてください。何が起こったとしても、エビ蒸し餃子があなたの力になりますよ!
[player] エビ蒸し餃子がどうやって私の力になってくれるんです……?
[-] 店員は歯並びのいい、標準的な営業スマイルを見せた。
[店員] どうも、こんにちは。私がエビ蒸し餃子です。
[player] ……なんですその変な名前? じゃあ私はニラ饅頭ってか?
[-] 店員は「その通り、あなたはニラ饅頭ですよね」とでも言いたげな表情を浮かべ、気遣わしげに階下へと下りていった。すると、ドア越しにこんな言葉が聞こえてきた……
[店員] ボケッとするな、早く二階の大事なお客様に料理をお出ししろ、空腹のあまり幻覚を見てるぞ!
[player] ……後で社長にあいつのクレームを入れる必要があるみたいだな……!!
[-] なんだかんだで、私の混乱した思考も徐々に落ち着いてきた。もし本当に強盗なら大変だ。今あの競売場に展示されている品物は、どれも「竹雲」周年祭のチャリティーオークションに出品されるものなのだから。とりあえず、梅さんに電話して聞いてみよう!
[-] 梅さんに電話しようとすると、意外にも向こうから先に電話がかかってきた。
[-] 今あの競売場に展示されている品物は、どれも「竹雲」周年祭のチャリティーオークションに出品されるもので、とても貴重なものだ。こういう時は、やっぱり問答無用で通報した方がいいよな。
[-] 通報しようとスマホを開くと、ちょうど梅さんから電話がかかってきた。
[-] 今あの競売場に展示されている品物は、どれも「竹雲」周年祭のチャリティーオークションに出品されるもので、とても貴重なものだ。強盗事件らしき事件が起きた以上、まずは梅さんに知らせた方がいいはず。
[-] 梅さんに電話しようとすると、意外にも向こうから先に電話がかかってきた。
[梅] 朝食はもう済んだ?
[player] まだなんですけど、大変なことが起こりまして……
[梅] 口に合わなかったら、後で私のメールアドレス宛に苦情を送って。
[player] そうじゃないんです、まだ切らないでください!
[梅] 待遇の件なら竹、安全に関することなら菊に、「竹雲」との提携の相談なら蘭に……
[player] その他、その他です!
[梅] その他なら、二時間後にかけ直して。
[player] ……強盗です!!!
[梅] ……強盗?
[player] さっき、「飲茶 竹雲」の二階の窓から、競売場の二階で強盗事件らしき事件が起きてるのを見たんです。でも距離が遠くて、確証を得るまでには至らなかったんですけど……
[-] 梅さんはしばし沈黙した。どうやら、マイクを押さえて誰かと何か話しているらしい。私との通話に戻ったのは、それから一分後のことだった。
[梅] 楓花様に伝えておいたから、通報は少し待って。
[梅] 大事なオークションの商品が消えたなんて情報が広まったら、真偽がどうであれ、オークションに不要な損失をもたらすから。
[梅] とりあえず競売場に向かって、現場は出来る限り保存しておいて。私達もすぐ行くわ。
「無双競売場」
[-] 競売場に到着してほどなく、南社長と梅さんも駆けつけた。正門から入ると、梅さんは手慣れた様子でセキュリティーシステムを確認した。しかし、監視カメラはもう壊されていた。
[-] このまま二階に向かいますわよ。
「無双競売場」 二階
[-] 二階には今回のオークションの商品が展示されている。ロビーから螺旋階段を上ると、ほとんどの棚は無事だったが、窓に近い棚の扉だけは開け放たれていた。
[-] 窓辺の隅には手足を縛られた少女が転がされている。作業着姿で、まだ動揺しているのが表情を見て分かった。
[-] 南社長は棚の方へまっすぐ歩いて行く。私と梅さんは少女のもとへ向かい、彼女を縛っている縄をほどいた。
[-] すぐ傍の窓の方を見ると、真向かいに「飲茶 竹雲」があった。どうやらここが、先ほどの「事件現場」のようだ。
[梅] あなたは、葵?
[葵] うぅ、あの梅さんが私のことを覚えててくれたなんて……十二歳の時、あなたが私を不憫に思って……
[梅] ……作業着に名前が書いてあったから。
[梅] 今朝、勝手に競売場を閉めた理由を聞かせてくれる?
[葵] 梅さん、私じゃないんです……け、今朝起きたら二階から物音が聞こえて、それで上がってみたのですが……仮面をつけた人が、棚の鍵をこじ開けようとしてて……
[葵] わ、私、怖くなって外に逃げようとしたんですが、通用口のドアが、内側から棒で押さえつけられていたんです。うう……逃げ遅れて、その人に捕まって、それから棚を開けろって迫られて……
[-] なるほど、さっき通用口を開けられなかったのは、それが原因だったのか……
[-] 梅の指示のもと、私は唯一開いている棚の扉付近をひと通り調べた。すると、金属製のシリンダーの鍵穴に引っかき傷がはっきりとついているのがわかった。私は立ち上がり、梅さんに向かって頷いた。梅さんは葵への質問を続けた。
[梅] 今日、競売場には何時に来たの?
[葵] き、昨日からずっといました……昨夜は大雨で帰れなくて、従業員用休憩室で一晩寝てたんです。
[player] 昨夜そこにいたのは、あなただけですか?
[-] 葵さんは頷き、梅さんは従業員名簿をめくった。
[梅] 確かに彼女しかいないわね。本来ならもう一人、男性従業員の徳もいるはずだったんだけど、数日前に転んで足を怪我したから、今週は丸々休みになってるわ。
[梅] この競売場には最新のセキュリティーシステムを導入してて、全方位死角なしの監視カメラを設置してるから、あまり現場に人員を割いたりしないの。
[-] そこまで話すと、梅は突然うつむいて冷たく笑ってから、話を続けた。
[梅] このセキュリティを破れるなんて、どうやらうちのシステムにかなり詳しい奴の仕業のようね。
[player] 強盗犯の特徴は?
[-] 仮面をつけてたので、か、顔はわかりませんでした……あっ、それと、話し声がすごく変でした。変声機をつけてたみたいです。ま、まるで女性の声のようでした……
[梅] 仮面はどんなもの?
[葵] 赤っぽい……朱色って感じの色で、くちばしがついた、鳥の頭みたいな仮面です!
[-] 手がかり入手:【朱色の鳥仮面】
[-] 南社長もすべての棚を調べ終えたようで、手にしていた扇を静かに閉じ、ガラス棚を軽く叩いてにっこりと笑みを浮かべた。
[南楓花] いい知らせがありますわ……無くなった商品は一点だけ。
[南楓花] 悪い知らせも……その無くなった商品は「聖祷の心(ハート・オブ・ディバイニティー)」ですの。
[-] 梅さんはその言葉を聞いて険しい表情になり、足早に棚へと近づいた。私もついて行くと、棚の中に、心臓のような形をした浅いへこみのある赤いシルク地の台座があるのが見えた。
[player] そのハート・オブ……なんとかって、何ですか?
[梅] 「聖祷の心(ハート・オブ・ディバイニティー)」。唯一無二の美しさを持つ羊脂玉で、天然ものでありながら心臓のような形をしている、極めて値打ちのある品よ。今回のオークションの目玉商品だった。
[南楓花] 一昨日の夜に送られてきたばかりですのに、その品が今朝消えた……この強盗犯の方は大変な目利きでいらっしゃるのね。まるで初めからこれを狙っておいでになったようですもの。
[梅] つまり……
[梅] 私達やスタッフを除くと、「聖祷の心」を見たのは、昨日の展示会にいらしていたお客様しかいないはず、ということですね。
[-] 私の疑問を見抜いたかのように、梅さんは私に説明し始めた。
[梅] あなたはこの仕事に就いて日が浅いから、なぜそうなるのか良くわからないのも無理ないわ。オークションが始まる前に、全ての商品がここに展示される。自分の目当ての品をなるべく早く見つけようと、お客様はここにほぼ毎日足を運んでくださるの。そのおかげで、オークションが順調に進められるのよ。
[-] そう言うと梅は口を噛み、言いにくそうに南社長に話しかけた。
[梅] しかし……
[南楓花] しかし……昨日のお客様は特別にご招待した方々。骨董の専門家や一飜市の著名人ばかりだった。仮に目をつけたとしても、さすがにこのような犯罪行為に及ぶはずがない……うふふ、あなたの言おうとしたこと、当たっていたのではなくて?
[葵] まさか、昨日のあの方たちが……どいつもこいつもまともに見えたのに、忌々しい……!
[南楓花] 御覧なさい、梅。あなたの部下ですらわかっていてよ。人間とは欲深いもの、それはあなたの想像を超えるほどだと。
[梅] 申し訳ございません、私が至りませんでした。如何様に対処いたしましょうか、楓花様。
[南楓花] あなたは戻ってあたくしの代理として「竹雲」の事務処理をなさい。この件はあたくしが直々に指揮いたしますわ。
[南楓花] オークションは……向こう三日はすべて中止としましょう。入口に非常線を張ってちょうだい。あたくしの許しがない者は、誰であろうとも出入り禁止といたします。
[player] えっと、それなら私は? 私はただの目撃者で、知ってることは全てお話しましたが……
[南楓花] PLAYERは、もちろん特別でしてよ。
[player] ふぅ……
[南楓花] なぜなら、あたくしの「側近兼秘書」であり、オークション監督者でもあるあなたには、犯人を見つけ出し、「聖祷の心」を取り戻す義務がおありですものね!
[player] わ、私がやるんですか……!?
[-] 南楓花は笑いながら私の肩を叩き、「頑張れ」とジェスチャーすると、くるりと身を翻して去っていった……
[-] 梅さんはどこかためらいを見せていたが、やがて私に【VIP向け展示会招待リスト】を手渡すと、足早に南楓花の後を追って行ってしまった。
[-] ……まあいいさ、やってみよう! 私はプロじゃないけど、それ以上に犯人が素人だって可能性もあるんだし。
[-] 手がかり入手:【VIP向け展示会招待リスト】
[-] ざっとリストに目を通してみると、思いがけずよく知っている人の名前がいくつか載っていた。サターン、セイラン、三上千織、九条璃雨、それから二階堂美樹……
[player] この招待リストに載ってる人達って、いつ頃来たんだろう……?
[葵] あ、あの、少しお待ちください。当日いらしたお客様は全員リストアップしてありますので、お調べします。
[-] 葵さんに連れられ、ロビーのパソコンスペースで当日のVIP客の名簿を確認した所、サターンさん以外は全員現場に来ていたことが分かった。私はこの手がかりを頭に入れてから、招待リストをしまい、現場の調査を始めた。
[-] 盗まれた展示品が収められていた棚以外は、二階に特に異常はないようだ。一階のロビーにも、見てすぐわかるような痕跡は何もない。しかし、競売場の入口まで行くと、地面に気になる所がいくつかある……