[-] 私は急いで井戸の影に転がり込み、身を隠そうと試みた。
[目隠しの少女] ……軽い足音、走った距離は十一歩かそこら。
[player] なにその聴力……チートじゃん……。
[-] 硬い石材を使った机なら、槍の攻撃も防げるだろう。私は、素早く石製の机の下に身を寄せた。
[目隠しの少女] ふん、そんなところに隠れても見え見えだぞ?
[player] あの目隠し、実はゴーグルか何かで、本当は透けて見えてるんじゃないか!?
[-] 向こうにある槍掛けが目に入り、ふとひらめいた。
[一姫] ご主人、このままじゃ負けちゃうにゃ! ……にゃにゃ? そんな所に隠れて、大丈夫かにゃ?
[-] 驚く一姫の声を尻目に、私は軽やかな身のこなしで槍掛けの後ろに身を潜めた。
[player] 勝てないなら、隠れるしかない!
[目隠しの少女] 声がした方向から考えて、一、二、三……四本目の槍の後ろに隠れてるな?
[player] 嘘でしょ???
[目隠しの少女] 見つけた。
[-] 目隠しをした少女は素早く飛び出し、槍を突き出すと、私の服の裾が破れない程度に軽く触れた。
[目隠しの少女] これくらいで十分だろう。
[一姫] うお~っ、かっこいいにゃ! ご主人の完敗にゃ!
[-] この裏切り者、いや猫! どっちの味方なんだー! ……いや、昔の人はこう言ったぞ。「試合に負けて勝負に勝つ」と。
[player] くっ、見事な槍技。ですが、ここで槍を振り回すのは、「竹雲」の従業員規則……特に、安全規則に違反しているのでは?
[一姫] おお、ご主人もご主人で、早すぎる立ち直りにゃ! さすがだにゃ!
[目隠しの少女] 安全? あたしの管轄だけど。
[player] あなたの管轄? ってことは……!
[ゆず] キュルルゥ! 違法な喧嘩じゃなさそうなのだ。合法なのだ。
[player] 喧嘩に違法も合法もあるか! って、そこにいるのはゆず!?
[カーヴィ] 運命の導きによれば、お二人は今後唯一無二の宿敵に……
[player] カーヴィさん? どうしてあなたも……いや、というかなんでこんなに大勢の人が!?
[-] 周囲を見回すと、周り一帯に多くの従業員やお客さんが集まってきていた。裏庭の壁の上から顔を出している人までいる。
[-] さすが一飜市の住民、いつも好奇心旺盛だ……。
[嵐星] 麻雀だけでなく、武術にも心得があったとは! さすがお師匠! ここはお師匠の動きをしかと書き留め、修行に勤めねば!
[イブ・クリス] ああ、あれが「南湘」の伝統的な武具ですか。さすがの威力ですね。
[player] ……なんだなんだ、天下一の武道会でも開かれるのか? ここ「竹雲」の裏庭で?
[姫川響] ……ってなわけで、「竹雲」の戦乙女について解説してやろう!
[姫川響] 何日か前から世間を賑わしている、目元を隠した凛々しい小女……彼女は一人で「竹雲」に押し寄せるならず者に立ち向かい、槍をふるって悪を追い詰め、一網打尽にしたという。その戦乙女こそ、ズバリこの人だーっ!
[player] どういうわけで!? しかもその噂も聞いたことないし! っていうかさすが配信者、解説上手だな!
[姫川響] 今日、伝説の戦乙女が再びこの地に姿を現した! 今から繰り広げられる死闘の結末やいかにっ!?
[player] いやあの、これから死人が出るような事態になるの!?
[群衆A] いいぞー!
[群衆B] 「竹雲」で武道会をやってるってのはここだな! しかも響様の生実況解説付きとか、めっちゃ豪華なんだけど!
[群衆C] 「竹雲」周年祭、舐めてたわ~!
[姫川響] ギャラリーのみんなも知ってる通り、「竹雲」には「梅、蘭、竹、菊」の四人からなる「四君子」がいるんだけど、ここにいる目隠しの戦乙女こそ、かの有名な「菊の君子」としても知られる、南社長のボディーガード……九華さんだ!
[姫川響] んで、挑戦者の方もめっちゃ強い! 南社長の厳しい選抜を見事に突破した、我らが名コーチ!
[player] いやいや、みんなのコーチになった記憶はないし、なるつもりもなーい!
[-] 響様は悪そうな笑みを浮かべている。くそっ、これ絶対わざと煽ってるわ!
[-] 野次馬も私の紹介を聞いて、「こいつはただ者じゃなさそうだ」という目で私を見ている。私は「菊の君子」への挑戦者、もっと言うなら本日の主役になってしまったようだ。
[カーヴィ] 予期していなかった流れだけど、君のことだから、これも運命に導かれた結果かもしれないわね。
[嵐星] うおおおおっ! さすがはお師匠!
ここまで盛り上がってしまっては、さすがに逃げられない。私は「菊の君子」こと九華さんから長槍を一本受け取り、庭の中央に立った。
というわけで、試合開始!
[-] 九華さんは、軽やかな身のこなしで私の周囲を駆けた。気まぐれにステップでも踏んでいるようで、なかなか動きが読めない。
[嵐星] お師匠! 迷わず正面から突破するでござる! 隙が生まれるのを待つより、自分で隙を作るのでござるよ!
[-] 隙がなければ作ればいいってことか! 嵐星の言葉を頼りに、私は覚悟を決めた。
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