[player] 『伝統食材の輝きをもう一度』、失われし伝統食材を探す……封印された希少な香辛料、百年以上保存されている醤油の壷、千年もの間生き長らえてきたキノコ……すべてを活用し、「竹雲」のレシピ開発をさらに推し進める……
[player] 『真のグルメグランプリ』、グランプリを通じて「真のグルメ」を決める……「グルメツアー」「無料試食付き講演会」等のイベントを企画……各地域から「グルメ大使」を選出し、彼らが自発的に「竹雲」ブランドを宣伝するよう誘導する……
[???] 周年祭のプロモーション案です。いかがでしょう?
[-] 上品な内装の、淡い蘭の花の香りが漂う部屋の中、車椅子に座ったオーラのある青年が優雅に微笑んでいた。
[-] 彼こそ、「竹雲」四君子の一人、蘭さんだ。九華と竹から色々な話をたくさん聞かされたのもあって、会う前はおっかない人なのだろうと思っていた。
[-] しかし、実際に会ってみると、二人が言っていた人物像とは少し違うような……。
[player] あ、あの、現時点ではなんですけど……。
[蘭] 遠慮せず、気になることはぜひおっしゃってください。あなたは楓花様のご推薦で、プロモーション周りの仕上げ……周年祭準備の大詰めにあたる仕事を手伝うために来てくれたのです。楓花様のご判断も、あなたの能力も信頼していますよ。
[player] それでは……。ここにある計画はどれも、やや実現性に乏しいです。周年祭の本開催も迫る中となると、準備に時間がかかりそうですし、間に合わないかもしれません。
[蘭] ……そうですね、おっしゃる通りです。では、こちらの案はどうでしょうか。
[-] 蘭さんは別の書類を渡してきた。
[player] 『周年祭アンバサダー』、著名人をアンバサダーとして招き、ブランドの影響力を高める……
[蘭] やや保守的な案ですが、そのぶん実現の可能性も高い案です。
[-] ページをめくってみた。「候補者一覧:大人気アイドルグループ「W・I・N」、スーパーモデル・シンシア、トップ配信者・姫川響……」。リストはまだまだ続いている。
[player] この案でしたら、私も賛成です。ただし……。
[蘭] それは良かったです。そうしましたら、あなたに実行役をお願いしたく思います。このリストから、あなたが思う適切な人を選び、「竹雲」周年祭のアンバサダーとしてスカウトしてください。
[-] 蘭さんは依然として人の良さそうな微笑みをたたえていたが、なぜだろう、最初の村で無理難題クエストを出すNPCのように見えた。九華さんが言っていた「笑顔の閻魔様」という評は、実態に則しているのかもしれない。いきなりこんな難易度HELLのクエスト出してくるんだもんな……。
もしここがRPGの世界なら、今頃クエストリストには「※メインクエスト:有名人を周年祭のアンバサダーとして勧誘(0/1)」って出てるんだろうな。
[-] それはともかく、周年祭の賑やかな雰囲気を考えると、歌とダンスが得意な「W・I・N」が最適かも。そう考え、佳奈ちゃんに電話をかけた。
[藤田佳奈] ちょうどリハーサルが終わったタイミングで電話してくるなんて、やっぱり私たち、何かの運命で結ばれてるんじゃな~い?
[藤田佳奈] 佳奈ちゃんと相性100%のファンさん、今日は何のお誘いかな? あ、先に言っとくけど、ご飯は最近ダイエット中だから無理かも。
[player] そうなんだ、じゃあご飯に行くのは今度のツアーの打ち上げってことにしよう。今回は仕事の依頼の話で連絡したんだ。実は……
[-] 「竹雲」周年祭のアンバサダーについて、佳奈ちゃんに説明した。本当はマネージャーを通さないといけないんだろうけど、とりあえず本人の意思を確かめておこうと考えて。
[藤田佳奈] えー! 私で良かったら……あ、でも待って、いったんマネージャーさんによく確認しなきゃかも。うちさ、先月、「無双街」のミルクティーブランドと契約したばかりなの。だから、しばらく他の飲食関係の広告には出られないかも……。
[藤田佳奈] うぅ~……せっかくのファンさんからの依頼なのに~……
[-] 電話を切って、ため息をついた。この二年ほどで「W・I・N」の人気は急上昇している。多くの企業が彼女達を狙っているのはわかっていた。
[-] リストの続きを見てみる。「W・I・N」の後に見えている名前のうち、私が知っている人というと、シンシアさんと姫川さんだ。
[player] 姫川さんは、このところ「竹雲」周年祭関連の配信をかなりやってくれてるもんな……彼女をアンバサダーにスカウトしても、お客さんからしたら意外性が足りないかも。
[player] となると、シンシアさんがアンバサダーになってくれれば……って、何この通知! タイミング良すぎじゃない!?
[-] ベストタイミングで、「CatChat」のトレンド通知が飛んできた。「スーパーモデルシンシア、フィットネス動画を披露してトップトレンド入り、検索回数急上昇」。これはぜひ便乗しなければ。
[シンシア] 仕事中の通話は、私の時給換算で通話料を請求するから。それじゃ、計測開始。
[player] 冗談ですよね!?
[-] 電話一本で破産なんて事態を回避すべく、「竹雲」周年祭のアンバサダーについてなるべく簡潔に説明した。すると、シンシアさんも簡潔に断った。
[シンシア] 無理ね。
[player] えっ、なぜ……?
[シンシア] わかるでしょ、私はモデルよ? 私個人は「竹雲」の料理に興味はある。けどね、仕事柄、飲食業界のPR活動には向いてない。
[シンシア] 「健康的な生活、スリムな身体、高嶺の花」といったイメージがつきもののモデルは、飲食業界が求める「美味しいものが好き、よく食べる、親しみやすい」みたいなイメージとは正反対じゃない。
[シンシア] 天を指して魚を射るようなものってこと。たとえ私が契約したいって言ったとしても、チームが認めないと思う。だからごめん。
[player] た、確かに……。
[???] 手こずっているようですわね?
[player] み、南社長? どうしてここに?
[南楓花] そう構えなくてもよくてよ。催促に来たわけじゃなくて、たまたま通りかかっただけですの。
[南楓花] 何か困ったことがあればお言いあそばせ。あたくしにもアドバイス出来ることがあるかもしれません。
[-] 通話の内容を伝えると、南さんは少し考え込んだ。
[南楓花] まだ挽回できると思いましてよ。シンシアさんがおっしゃった「無理」は、双方のイメージが一致しないことを客観的に指摘しただけで、ご本人の意思としては完全に拒否したわけではないように聞こえます。
[player] はい、私もそう思います。ですけど、どうやって説得すればいいのやら……。彼女の言っていることは、確かに理にかなっていますし。
[南楓花] 交渉役に必要なのは、広い視野を持つことですの。一つの観点から説得しようとしても、すぐ壁にぶつかってしまいますわよ。
[-] 南社長は、まだピンと来ていない私の額を笑いながら扇子で軽く突いた。
[南楓花] 疑問に思いませんでしたの? アイドルグループに対する基本的なイメージも、モデルと同じで「美しくスタイルが良い」ですのに、それとは正反対の「ジャンクフード」の代表例であるミルクティー屋が、どうやって「W・I・N」とのプロモーション契約を勝ち取ったのか。
[player] 確かに! 他で出来て、うちで出来ないことなんてないはず……!
[-] 閃いた私は、再び佳奈ちゃんに電話をかけた。
[藤田佳奈] ファンさん、今日はちょっと甘えん坊だね~! でもそんなファンさんも佳奈ちゃんは好きだよっ。
[藤田佳奈] 広告の件で、詳しく聞きたいことがあるんでしょ?
[player] さすが相性100%、その通り。
[player] 実はちょっと疑問があって。アイドルグループの佳奈ちゃん達が、どうしてミルクティーの広告を引き受けられたの?
[藤田佳奈] んーとね……もちろん、佳奈ちゃんがミルクティーが大好きなことが一番の理由なんだけど……。
[藤田佳奈] それに加えて、マネージャーさんと会社の人達は、「W・I・N」は現役女子高生のグループで、栄養たっぷりのミルクティーは忙しい学校が終わった後の栄養補給にぴったりってことで、ブランドのターゲット層が合ってるって考えたみたい。だから、すぐ契約が決まったんだよね。
[藤田佳奈] ゴクゴク……いや実際、このミルクティーマジで美味しいの!
[マネージャー] 藤田さん! 飲みすぎはダメって言ったでしょう!?
[藤田佳奈] ヤバい、マネージャーさんに見つかっちゃった! これから叱られてくるから、いったんバイバーイ!
[-] 佳奈ちゃんが教えてくれた情報によれば、広告契約には双方のブランドイメージが一致していることが重要で、それがターゲット層への訴求力に影響して来るらしい。
[-] そこで、再度シンシアさんに電話することにした。
[シンシア] またかけてくると思ってたわ。一度断られたくらいで諦めるような人じゃないもの。
[player] まさかそんな風に思われていたとは……あはは。
[シンシア] さて、今から十分間だけなら、タダで話を聞いてあげる。それ以降は追加料金を取るわよ。
[player] それで十分です。シンシアさん、やっぱり私は、「竹雲」とシンシアさんのブランドイメージには多くの共通点があると思います。
[シンシア] へえ? 例えば?
[player] 「竹雲」の料理は、常に「安心安全」を第一にしています。全ての原材料の産地を明記していて、消費者に安心して食べてもらえるよう努力しているんです。
[シンシア] で、それが私とどう繋がるの?
[player] シンシアさんも「竹雲」と同じで、一貫して健全で前向きです。しかも、ファンから見たシンシアさんは、スキャンダルとは無縁の存在……まるで「竹雲」の料理のように、常に最高で安心な存在であり続けています。
[シンシア] ふーん。なかなか珍しい着眼点ね。他には? これだけだと、私にメリットがないんだけど。
[player] もちろん、お互いに利益がないといけないですよね。今、シンシアさんの活動は海外に焦点を当ててますよね。となると、他の世界的スーパーモデルと同様に、ファッションの最前線を走らないといけないし、かつ最前線で自身の優秀さをアピールしないと光れない。
[player] 「竹雲」と協力して、「無双街」が持つ異国情緒をシンシアさんのファッションと融合させれば、「神秘的な異邦の美女シンシア」としても売り出せるし、より独自性が高い姿も見せられて話題性も高まるのではないかと。
[シンシア] あら、私の今のスタイルじゃ、他と一緒だって言いたいのね? その勇気、褒めてあげるわ。
[player] そ、そんなつもりはないです。ただ……!
[シンシア] ほら、PLAYERさんもそう言ってるし。ちょうど新しいスタイルを模索してた所だったし、この広告から始めてもいいんじゃないですか?
[player] ……あの、誰と話しているんですか?
[シンシア] ああ、燥無さんが仕事を視察しに来ててね。こういう仕事は、マネージャーと上司が良いって言わないと出来ないから。
[燥無] 俺ぁ異議はねぇ、やってみろ。
その日の夜
[蘭] シンシアさん、こちらが『竹雲』本店のブースです。
[-] 私達は、メインイベントの前座として街全体でグルメフェスを開催している無双街にやってきていた。普段営業しているお店や屋台だけでなく、試食会、抽選会、実演調理など、さまざまなブースが設営されていて盛況だ。ランタンの明かりが「無双街」を遠くまで照らしていた。
[-] 数時間前、私はシンシアさんの説得に成功し、「竹雲」周年祭のアンバサダーとして迎えることが出来た。
[-] それに伴い、シンシアさんが「竹雲」主催のグルメフェスに来て、周年祭当日の雰囲気を味わってくれることになった。プロモーションで使用する動画素材も、ここで収録する予定だ。
[蘭] どんなビジネスイベントであろうと、最終目的は等しくお客様を引き寄せ、消費を増やすことです。我々は、今回の周年祭をより盛り上げるために、本会場にしかない催しとして「気まぐれグルメくじ」というものを企画しました。
[シンシア] この「気まぐれグルメくじ」というのは、具体的にどんなものなんですか?
[蘭] 完全ランダムの食材くじを引くと、シェフが気まぐれで料理を作ります。お客様は、実際に口にするまで、その食材がどんな料理になるのかわからない……というものです。
[蘭] 食材はランダムに選ばれますが、安全面についてはご安心を。食物アレルギーへの配慮はもちろんのこと、すべての食材や調味料は厳格に選別されてまして、事故は起こらないと保証します。
[蘭] さらに、不調や病を引き起こすような食べ合わせは、あらかじめ排除してありますので。
[シンシア] なかなか面白そうですね。
[蘭] シンシアさんにそう言っていただけて幸いです。もしよろしければ、一度「気まぐれシェフ」として調理に挑戦してみませんか?
[シンシア] むしろいいんですか? なら、お言葉に甘えて。
[シンシア] 「PLAYERも一緒にどう? それとも他に仕事がある?
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