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自分の用事を先に済ませる

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[-] シンシアさんを囲む多数のカメラに少し圧倒されてしまった私は、一度カメラが届かない所で一息つこうと決めた。
[player] まだ仕事が少しあるので、収録が終わった頃にまたお会いましょう。
[シンシア] そう。じゃあまた後で。
[-] シンシアさんと別れた後、グルメフェスの他の出店を見て回った。開催日当日に迷ったりしないように、まず位置関係をよく把握しておかないと。
[???] PLAYERさーーん!
[player] 九華さん?
[九華] はい、これ食べてみて! 今買ったばかりで、まだ温かいよ!
[-] 九華さんがくれたエビ蒸し餃子の水晶のような皮の内側には、青緑色の何かがが透けて輝いていた。一口食べてみると……
[player] んぐっ、ゴホゴホッ……! ひっ、ヒーーッ!{var:ShakeScene}
[-] 最初に感じたのは、皮の柔らかい食感。その次にやって来たのは、突如として鼻の奥に炸裂したワサビの辛み。急なダメージに目が回り、咳と涙が止まらなくなった。
[player] き、九華さん……!
[九華] フンッ、裏切り者には報いを、だ……っ! 梅お姉ちゃんに言わないって約束したのに、うう~~! エホエホッ!{var:ShakeScene}
[-] 涙を拭う九華さんにティッシュを差し出して、苦笑した。悔し涙かと思ったけれど、咳き込んでいるから多分自分でも最初にひと口食べたんだな……。
[player] 今はみんなで力を合わせる時じゃないですか? というか、これ、どこの出店で買ったのか教えてください。絶対買わないようにしないと……。
[-] 九華が指し示した方向に進み、エビ蒸し餃子の出店に向かうと……そこで蒸籠の様子を見ていたのは二階堂美樹さんだった。
[player] ……なるほど、そういうことか……。
[-] 見つかる前に静かに立ち去ろうとした時、竹くんを見かけた。ちょうど彼も顔を上げてこっちを見ていた所で、目が合った。
[竹] ん? ああ、また会いましたね。
[-] 竹くんの傍まで向かうと、ペンを持って何か計算している所だった。横の台には、すっかり冷めた様子の一品料理などを入れる紙の箱が置かれている。
[player] こんな時でも会計係ですか? もう少しグルメを楽しんでも良いと思いますよ。
[竹] グルメ、ですって?
[-] 竹くんは無言で紙の箱を差し出した。蓋を開けてみると、中には一口かじられた形跡のあるエビ蒸し餃子の残骸が入っていて、中の餡が妖しい緑色に輝いていた。そうか、君もまた、あの魔女の犠牲者ってことか……。
[-] 竹くんは涙を滲ませながらもう一口食べると、計算を続けた。
[竹] 計算上、四分の三を食べないと元が取れません。PLAYERさんも、何かを買ったらしっかり損益を計算したほうが良いかと。
[player] これが二階堂さんのやり方か……!
「竹雲」本店 個室
[-] 竹くんが残り四分の一まで正確に食べると、一緒に本店のレストランで夕食を食べようと誘ってくれた。やって来た「竹雲」で、竹くんは見事に剪定された竹の鉢植えを差し出してきた。
[竹] 唐突ですみませんが、ぜひこれを受け取ってほしいんです。
[player] これは……?
[竹] 万年竹です。先日、一緒に帳簿を片付けてくれたことのお礼です。いろいろ考えた末に、これに決めました。「幸運」や「商売繁盛」の願いを込めて。
しるし入手:万年竹の鉢植え
[player] 「商売繁盛」か……いいですね、気に入りました。
[-] 鉢植えを受け取ると、振れた感触で底に文字が刻まれていることに気付いた。持ち上げて見てみると、「十念より」とあった。
[player] じゅうねん……? これは?
[竹] あぁ、僕の名前です。
[player] え? 「梅、蘭、竹、菊」って、名前じゃなかったんですか?
[十念] それは楓花様がつけてくれた別の名、言わば身分の象徴です。優秀さを認められて「竹」を名乗れるようになりました。もし僕が、楓花様が望む「竹」のイメージに合わないようなことをしたら、その時はまた別の人が「竹」になると思います。
[player] ええっ、結構厳しい競争をしてるんだね……。
[十念] まあ、それは置いといて。僕のことは名前で呼んでもらっても構いませんが、対外的な場面ではこれまで通り「竹」と呼んでください。
[十念] 四人の身分の証ですから。梅姉さん、蘭兄さんと並んで、僕もまた、この称号にふさわしい人間だという証明です。
[player] わかりました。ですけど、九華さんは……?
[十念] 九華はまた別です。槍と同様に、「九華」という名前もまた、本人にとって特別な意味を持っています。付き合いが長くなれば、いずれその意味がわかってくるでしょう。
[player] そうなんですか。これは気になりますね……。
[-] 私が十念くん、つまり竹くんに「竹雲の四君子」の秘密を洗いざらい話してもらおうと策を考えていると、蘭さんから電話がかかってきた。「竹雲」のメインエントランスで会いましょう、と。
「竹雲」本店 メインエントランス
[-] 竹くんとともにエントランスに到着すると、蘭さん、梅さん、九華さん、南社長まで勢揃いしていた。
[南楓花] こんな時間にお呼び立てしてごめんあそばせ。実はこちらの四人から、もう一つのプロモーション案が提案されましたの。
[-] 九華さんが軽やかな足取りで私の傍までやって来て、何やら含みのある笑顔でスマホを取り出し、動画を再生した。その内容は、姫川さんによる私と九華さんの「対決」配信のアーカイブ、梅さんが撮影していたらしい帳簿に向かって悩む私の背中の写真、シンシアさんがCatChatに投稿した、グルメフェスでの私とのツーショット……これらの素材を一本の動画に編集したものだった。
[player] これはいったい……?
[蘭] 有名人や著名人をアンバサダーにするのは、プロモーションとして確かに有効です。ですが、他にも「竹雲」の魅力を伝える方法はあります。そのうちの一つは、このようにドキュメンタリー形式で、「竹雲」の周年祭に向けたきめ細やかな準備と、社員達の企業愛を伝える方法です。
[南楓花] そうなると、私の忠実な秘書さん、あなたこそ最適な主人公となりますの。周年祭の準備のほとんどに関わっていて、どの現場でもあなたの姿がありましたものね。
[南楓花] このドキュメンタリーも、あと最後のパートでようやく完成しますの。それは、主人公であるあなたが、「竹雲」で働いた感想をお話するパートですのよ。
[九華] えへへ、大丈夫だよ。もしこのドキュメンタリーに続編があったら、あたしがうんと褒めてあげる。
[十念] ぼ、僕だってそうします。
[梅] では……始めましょう。
[-] 梅さんがカメラを構えたので、とりあえず何か言おうとしたのだが、ここ数日間で感じた「竹雲」のあれこれが立て続けに思い起こされて、言葉に詰まってしまった。
[九華] もう、もっと自然な表情してよ!
[十念] 服の裾が皺になってますよ。
[-] なんとかカメラに向かってひねり出した言葉、それは……
「皆さん、ようこそ、『竹雲』へ!」//n「そして『竹雲』周年祭へ!」