「千里鶯啼いて緑紅に映ず、水村山郭酒旗の風…」
と、美しい漢詩と共に流れたCMにつられて、この週末、私は一飜市の隣にある古風な町に観光に来ている。
優雅な週末を過ごすはずだったが、着いて早々ハプニングが続出した。まずスマホがいきなりフリーズし、再起動さえ受け付けなくなってしまった。初めての町を地図もなく歩くのは辛いなと思い、その時唯一近くにいた人物――遊んでいる八歳児に助けを求めたら、ありがたいことに鉛筆でシンプル過ぎる案内図を描いてくれたのだ。
そのおかげで、ただいま絶賛迷子中である。
[player]ここはいったいどこなんだ……!?
入り組んだ細い路地に、どこに出ても似たような景色が続く、白と黒を基調としたの住宅街。更に、中心部からだいぶ離れてしまったせいか、周りに人っ子ひとりおらず……私は手書きの地図を持ったまま、途方に暮れていた。
[player]一旦引き返すのも手か? 来た道を忘れてないといいんだけど……。
[???]PLAYERさん?
八方塞がりかと思った時、背後から聞き覚えのある声がした。振り返っると、英樹が小走りにこちらに向かってくる。
明智英樹
[明智英樹]本当に君だったんですね。見間違いかと思いました。どうしてこんな所に?
[player]……いろいろあってさ。
固まったままのスマホを見せながら、今までの出来事を英樹に説明した。
[明智英樹]なるほど……。確かにこの辺りは住居の見た目も似ていますし、初めて来た人は迷いやすいかもしれませんね。
[player]そう言えば英樹はどうして? 観光? まさか英樹も迷ってるとか?
[明智英樹]あはは、違いますよ。僕は半分地元の人間みたいなものです。
[player]うっそ!?
[明智英樹]明智家の屋敷はこの町にあって、昔は連休のたびに帰省して、祖母と過ごしていました。
おばあさんのことに触れる英樹は、温かい目をしている。
英樹の実家の話は、これまで何度か聞かせてもらった。山水画のような、風光明媚な町らしいというイメージはあったものの、具体的にどの辺りにあるのかは一度も聞いたことがなかった。
正直に言うと、今日ここに来ようと決めたのも、そんな静かな町について話す彼に影響を受けたからだ。
[player]まさかここだったとは……。
[明智英樹]言ってませんでしたっけ? とりあえず、観光なら僕に任せてください。君さえよければ、ガイド役を務めます。
[player]英樹、せっかく帰って来てるのに、予定があるんじゃないの? 全然そっち優先でいいんだよ?
[明智英樹]大丈夫です、特に予定はありません。つい昔からの癖で、休みに帰ってきただけです。もう習慣になってしまってるんですよね。
[明智英樹]さて、まずはどこに行きますか?
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