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ヒーリさんを止めて、シジュウカラをしっかり説得する。

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[player]ちょちょちょ、もう十分でしょうよ。
[player]喧嘩じゃ問題は解決出来ないよ、私に任せて。
ヒーリさんの構えを見ていると、彼女がシジュウカラに何かするんじゃないかと本気で恐ろしくなった。一飜市の生活環境は、仮に一飜市を舞台としたアニメを作った場合、楽しく和やかな日常ものにしかならないし、喧嘩や殺し合いのシーンは血なまぐさすぎるという理由で審査を通らないようなものだ。
[player]シジュウさん、状況をよく考えて。これは「レイヴン」とよそ者の問題じゃなくて、あなた達と私達の問題だよ。
[シジュウカラ]ふん、てめぇが何を言うても無駄じゃ。
[player]私の言うことが無駄だとしても、あなたの言うことが無駄じゃなければそれでいい。ほら、何をするつもりだったのか軽く説明してくれれば……
[シジュウカラ]ダメったらダメじゃ。聞き分けの悪ぃ奴じゃのお。
シジュウカラに事の深刻さをわかってもらわないと、まともに会話してくれなそうだ。
[player]ヒーリさん!
私は持っていたバットを放り上げた。バットは弧を描いて飛んで行き、落下する直前にヒーリさんの鞭によって真っ二つになった。片割れがカラカラと弾んでシジュウカラの足元に落ちると、彼はゴクリと唾を飲んだ。
[シジュウカラ]……ここにおる奴らは全員兄弟じゃ、さあ話し合おうじゃねぇか。
[シジュウカラ]大した用じゃねぇよ。今日、俺等のボスが隣の組織……「ストリクス」のリーダーと会うっちゅうんで、カッコをつけるために舎弟を呼びつけとるんじゃ。
[シジュウカラ]俺等はここに仲間を呼びに来ただけじゃ。
[ヒーリ]まだしらばっくれるつもり!?
[シジュウカラ]あぁ?
[ヒーリ]タンチョウヅルを探しに行くって話してたの、しっかり聞いてたんだから。
[シジュウカラ]そうじゃ、俺等ァタンチョウヅルを探しに行くんじゃ。それがどうした?
ヒーリさんが無言で鞭を振るおうとした時、私は何か妙な感じがして止めに入った。
今日だけで「もう十分でしょ」と何回言っただろう。「レイヴン」の人間の物わかりがよくなることを切に願う。
[player]ヒーリさん、その「タンチョウヅル」って?
[ヒーリ]タンチョウヅルはタンチョウヅルだよ。額が赤いツル、見たことあるでしょ。
[シジュウカラ]額が赤いツルって何じゃ、俺等が探しとんのは赤髪の男やぞ。
[player]赤髪の男……どういうこと?
[シジュウカラ]チッ、さっき言ったじゃろうが。俺等は仲間を呼びに来たんじゃって。
[巨漢のチンピラ]うちの別チームのリーダー……ツルの兄貴は髪を赤く染めてるから、「タンチョウヅル」って呼ばれてんだ。
[貧相なチンピラ]そんで、ツルの兄貴は今日この近くでバスケをしてるって言うから、俺達とシジュウの兄貴で探しに来たっす。
[ヒーリ]……
ヒーリさんのもごもごと何か言いたそうな様子に、誤解に気付いたけれども、恥ずかしくて言えずにいるのだとわかった。それなら、ここはこのお人よし市民である私に任せたまえ。
[player]これって、俗に言う「雨降って地固まる」ってやつだね、はは。
[player]さて、誤解が解けたことだし、みんなで握手してそれぞれの日常に戻ろうか。
[シジュウカラ]俺は#¥%……&……
[ヒーリ]……
[シジュウカラ]まぁええわ、てめぇらにゃ付き合ってられん。
[シジュウカラ]もう二度と俺等「レイヴン」に絡んでくんなよ、じゃなきゃ容赦せんからの。
[普通のチンピラ]そうだぞ、覚えとけよ。
幸いヒーリさんの鞭が脅しになって、シジュウカラ達はちょっと捨て台詞を吐いただけでそれ以上つきまとってくることもなく、あっさりと立ち去った。
私はヒーリさんに、先ほど生じた疑問を問いかけた。
[player]ヒーリさんはなぜ「タンチョウヅル」って言葉を聞いて喧嘩を吹っ掛けたんですか?
[ヒーリ]はぁ……あんたにはすごく助けられたし、理由を話さなきゃ筋が通らないよね。
[ヒーリ]時間ある? 一緒に行きたいところがある。
私は、元々チャンスを窺って彼女と行動を共にしたかったことを思い出した。こんなに早くその機会が訪れるとは。ここまでスリリングな流れじゃなかったらもっと良かったんだけど。
[player]もちろんいいよ。
ヒーリさんと私は「Soul」付近の庭地へやって来た。長いこと放置されているらしく荒れ果てており、持ち主もいないようだ。雑草が生い茂り、名も知らない野の花が咲いている。ツタが家の窓の半分ほどまで伸びており、一種の自然そのままの美しさみたいなものがあった。
庭へ足を踏み入れると、しわがれたツルの鳴き声が聞こえた。町中ではそうそう聞かない鳴き声だったので、聞き間違いかと思い、ヒーリさんの方を見た。彼女は動じることなく頷いてみせ、勘違いではないと示した。
ヒーリさんとともに、枝葉がたくさん生えた大樹の下へ行くと、木の板と干し草で作られた簡素な小屋があり、声はその中から聞こえていた。
そっと覗いてみると、中には艶の無い羽を持つ大きなタンチョウヅルが横たわっていた。片方の脚は畳まれていて、もう片方は添え木と共に包帯を巻かれている。
[ヒーリ]この前、この怪我をしたツルを保護した。脚が折れていて、羽もバラバラに抜けて……自分で群れを探して繁殖地に戻る力もない。
[ヒーリ]この子がここで怪我を治す間、毎日ご飯をあげに来てるんだ。
ヒーリさんは、腰元のウエストポーチからラップに包まれた鳥の餌を取り出した。フリーズドライの食べ物もふんだんに使われていて、栄養がたっぷりありそうな感じだ。